2009年02月12日
Blog移転のおしらせ
2003年9月に開設して以来、ときには何ヶ月も更新しないこともありつつ続けておりました「私的スクラップ帳」ですが、スパムトラックバックやスパムコメント防止のため、新しく下記に移転することと致しました。
●私的スクラップ帳
http://blog.agata.ciao.jp
これまでと同様、日々のニュースについて感じたこと、考えたことなどを綴ってゆきたいと思います。早いもので、「私的スクラップ帳」をはじめて約6年半、その前身である「My Opinion」も含めると、約8年になります。これからも、相変わらずマイペースな更新のブログになることと思いますが、今後ともどうぞよろしくお願い致します。
2008年10月10日
「日教組の強いところは学力も低い」という嘘
世のなかには、思い込みが強すぎるあまり、客観的なデータを示されても冷静な判断ができなくなる人がいるものである。そういう人が、社会的影響力の大きい立場にいるのを見ると、暗澹とした気持ちにさせられる。自民党の中山成彬衆議院議員が「日教組の子どもなんて成績が悪くても先生になる」「日教組の強いところは学力が低い」などと発言して辞任した件のように。
ついでに言えば、大分県の教育委員会のていたらくなんて日教組ですよ。日教組の子どもなんて成績が悪くても先生になる。だから大分県の学力は低いんだよ。私は(文科相時代に)なぜ全国学力テストを提唱したかと言えば、日教組の強いところは学力が低いのではないかと思ったから。現にそうだよ。調べてごらん。だから学力テストを実施する役目は終わったと思っている。
この発言について、文科省の銭谷真美事務次官は「日教組の組織率が高くて(学力テストの)成績が良い県もあれば、組織率が低くて成績が良い県もある。一概には言えない」と明確に否定した(日教組と成績「一概には言えず」=前国交相の発言問題で−銭谷文科次官(2008.9.29付/時事通信))。さらに朝日新聞は、各都道府県の日教組組織率と学力テスト正答率とのデータの分析結果を具体的に示したうえで、「(両者の)相関関係はうかがえない」と明確に結論づけた。
「日教組強いと学力低い」中山説、調べてみれば相関なし(2008.9.27付/朝日新聞)
データをたどってみると、成績トップの秋田の日教組の小中学校組織率が5割超で全国平均(34.1%)を大きく超えるなど、全体的な相関関係はうかがえない。
(中略)
小6の全科目でトップ、中3もすべて上位3位に入った秋田の組織率は5割以上。組織率が9割近くと全国トップを誇る福井は、中3の3科目で1位だった。
「中山説」では、成績の低いところは日教組が強いはずだが、小6、中3の全科目で最下位だった沖縄の組織率は4割弱にとどまる。中3の全科目でワースト2位だった高知に至っては1割に満たず、何ともバラバラだ。
中山議員は、文部科学大臣を務めたときに全国学力テストの実施を推し進めた張本人である。これについて本人は、「なぜ全国学力テストを提唱したかと言えば、日教組の強いところは学力が低いのではないかと思ったから。現にそうだよ。調べてごらん。だから学力テストを実施する役目は終わったと思っている」などと述べているが、上記のとおり客観的データは彼の思い込みが誤りであることを示しているのだ。毎年60億円近い費用と、関係者の膨大な手間をかけて学力テストを実施する理由が、「日教組の強いところは学力が低い」という彼の "自説" (というよりも "勝手な思い込み" というべきか)を証明するためだったとは、呆れるばかりである。しかも、こうして莫大な費用と時間をかけて収集されたデータにもかかわらず、中山氏はそれを冷静に分析することもなく、「現にそうだよ」「だから学力テストを実施する役目は終わったと思っている」などと、事実と異なる発言を繰り返している。これではまるで、学力テストの実施に要した費用と時間と手間が、すべてドブに捨てられたも同然ではないか。
悲しいのは、思い込みが強すぎるあまり、客観的なデータを示されても冷静な判断ができなくなる人というのが、中山氏だけではないということだ。同じく自民党の町村信孝前官房長官は、日教組の強いところは学力も低いという中山氏の発言について「一つの神髄をついている」などと発言した。日教組の強さと学力とは何の相関もないことが、既に9月27日の朝日新聞記事によって示されているにもかかわらず、である。
町村氏「日教組発言、神髄ついた」 中山氏かばう(2008.10.6付/朝日新聞)
町村信孝前官房長官は6日、仙台市で開かれた自民党宮城県連主催の会合であいさつし、中山成彬前国土交通相の日教組に関する発言に触れ「TPOはまずかったけど、中身は一つの神髄をついている」と述べた。
さらに驚くのは、「冷静な判断ができなくなる人」がマスコミの側にもいることだ。10月8日、産経新聞は日教組参議院議員の得票数と学力テストの正答率との関係を都道府県別に集計・分析し、「成績下位と日教組議員の得票数が多い地域には、一定の相関関係がうかがえた」と結論づける記事を掲載した。
組合と学力に関連性はあるか? 低学力地域は日教組票多く(2008.10.8付/MSN産経ニュース)
組織率だけでは活動の過激さは分からない。
そこで日教組の「強さ」を測る指標として、平成19年と16年の参院選(比例)で、日教組の組織内候補(民主党の計2議員)の総得票数を調査。今春実施された全国学力テスト(小6、中3)の国語、算数・数学の平均正答率の合計を都道府県別に比較した。
すると、成績下位と日教組議員の得票数が多い地域には、一定の相関関係がうかがえた。
呆れてものも言えない。この記事を書いた記者は、そもそも都道府県によって有権者数が違う以上、得票数と学力テストの正答率を比較しても意味がないという単純な事実が理解できなかったのだろうか。さらに言えば、こんなお粗末な記事が掲載されたということは、記者だけでなく、社内で記事掲載の可否を判断できる立場にある人ですら、こうした基本的な誤りに気づかなかったのだろうか。
比較をするのであれば、日教組の組織内候補者の得票数ではなく、得票率と学力テストの正答率を比較しなければならない。インターネットで検索すると、何人かのブロガーがこの地道な作業を実施して、結果を公表していた(彼らの努力にはホントに頭の下がる思いがします!)。
産経の記者があまりにも。(2008.10.8付/黙然日記)
組合と学力に関連性はないと思う(2008.10.8付/kei999の日記)
分析の結果、日教組参議院議員の得票率(有効投票数千人当たりの投票数)と学力テストの正解率の間の相関係数は、-0.07以下であることが示されている。相関係数は、相関の強さを表す数値で、絶対値が1に近いほど相関があることを示す(逆にゼロに近いほど無相関)。-0.07という数値は、無相関と結論づけるしかない値である。
面白いことに、kei999さんの日記では、公明党の得票率と学力テストの正答率も比べていて、相関係数-0.47という結果を得ている。つまり、もし相関係数が-0.07でも「日教組の強いところは学力も低い」と主張するのであれば、「公明党の強いところは学力も低い」と主張しなければならない、ということになるのだ。
思い込みが強すぎるあまり、客観的なデータを示されても冷静な判断ができなくなる人は、マスコミや政治家などの社会的影響力の大きい立場からは、少なくとも退いてもらいたいものである。
【関連ページ】
中山成彬氏の公式ホームページ
2008年10月08日
「事前検閲」に違和感のない麻生総理
自民党が全府省庁に対して、野党から資料要求があった場合は事前に自民党に相談するよう指示していたことが明らかになった。報道によると、9月中旬、各省庁の官房長が集まる会議の席で、村田吉隆・自民党国対筆頭副委員長が「各省庁だけの判断で資料を提出することは厳に慎み、筆頭副委員長などにあらかじめ相談する」よう指示したという。改ざんの疑いのある年金記録が約75万件あることが明るみに出るきっかけとなった民主党議員からの質問主意書への回答も、この要請に従って厚生労働省から自民党に事前に報告されていた。後期高齢者医療制度に関する資料要求に関しても、事前に自民党に報告されていたという。
自民党:民主の資料要請で事前相談、全府省庁に要求(2008.10.3付/毎日新聞)
自民党:資料要求で全府省庁に相談指示 年金も事前報告 「情報隠ぺい」民主猛反発(2008.10.4付/毎日新聞)
これは事前検閲そのものではないか。
さらに信じられないのが、この問題に対する麻生総理の対応である。6日の衆院予算委員会で民主党の長妻議員から「なぜ事前か。国対が忙しければ、その間野党への資料提出が遅れる。事後や同時ではだめなのか」と質問された首相は、平然とこう答えたのだ(10月6日衆院予算委詳報(2008.10.7付/毎日新聞)より)。
「事後でいいなら、事前でもいいのではないか」
少し考えただけで、いかにこの答弁が詭弁に満ちたものであるかが分かる。
例えば自民党が報道機関(例えば新聞社)に対して、掲載予定の記事をあらかじめ事前に報告するよう求めたとしよう。とうぜん報道機関は「なぜ事前か。記事はいずれ公開されるのだから、事後や同時ではだめなのか」と反発するだろう。麻生総理の答弁は、これに対して「事後でいいなら事前でもいいのではないか」と言っているのと同じことである。
例えば自民党が、国内でインターネット上のブログを作成しているすべての人に対して、掲載予定の記事をあらかじめ事前に報告するよう求めたとしよう。とうぜん大半のブロガーは「なぜ事前か。記事はいずれ公開されるのだから、事後や同時ではだめなのか」と反発するだろう。麻生総理の答弁は、これに対して「事後でいいなら事前でもいいのではないか」と言っているのと同じことである。
つまり麻生総理答弁は、事前検閲をしてもいいのではないかと言っているのと同じ(あるいは、同じと受け取られても仕方ない)ものである。首相は自分の発言に、違和感を感じないのだろうか。だとしたら、あまりにも民主主義についての理解が低いと言わざるを得ない。
2008年10月07日
麻生首相:「日本経済は全治3年」は本当か?
「日本経済、3年で再生」 麻生首相が所信表明(2008.9.29付/日経ネット)
先月29日、麻生首相は所信表明演説で「日本経済は全治3年」とし、次のような3段階の措置を経て経済再生を実現すると述べた。
第170回国会における麻生内閣総理大臣所信表明演説(首相官邸HPより)
第一段階は、景気対策です(中略)第二段階は、財政再建です(中略)第三段階として、改革による成長を追い求めます。
以上、三段階について申し上げました。めどをつけるには、大体三年。日本経済は全治三年、と申し上げます。三年で、日本は脱皮できる、せねばならぬと信じるものであります。
この言葉、そのまま信用していいのだろうか?ここで私たちは思い出すべきだろう。2001年、当時の小泉内閣が、これと似たようなことを明言していたことを。
いまから7年前、小泉内閣が閣議決定した、構造改革に関する基本方針(通称「骨太の方針」)では、「今後2〜3年を日本経済の集中調整期間と位置付け(中略)その後は経済の脆弱性を克服し民需主導の経済成長が実現」すると述べられている。さらに「5年間で530万人の雇用機会の創出が期待される」と、はっきりと書かれている。
今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針(通称「骨太の方針」2001年6月26日)
このような施策の充実によって、今後雇用機会の拡大が見込まれるサービス部門への労働移動が円滑に行われることとなる。試算によれば、新規分野を含むサービス分野においては、5年間で530万人の雇用機会の創出が期待される。
果たして現実はどうだっただろう。2003年から2004年に、「骨太の方針」の言うところの「集中調整期間」を経て、その後「民需主導の経済成長が実現」しただろうか? 2006年までに「530万人の雇用機会」など創出されただろうか? むしろこの期間に、人々の生活はいっそう苦しくなっただけではないのか? 国税庁のホームページに「民間給与の実態調査結果」という統計資料が掲載されている。無機質な数字の羅列にじっくりと目をこらすと、小泉内閣の時代に何が起こったのかが浮き彫りになってくる。
例えば、年収200万円以下の人の割合を見てみよう。2000年までは10%台後半で推移していたのが、小泉内閣時代に急激に増加し、2006年には23%にまでなっている。特に女性の給与所得者の実態は深刻で、実に44%もの人々が年収200万円以下の状態に置かれている。20代・30代の若者も、深刻な状況に追い込まれている様子が分かる。年収が低下しつづけているのだ。1997年から2005年の間に、例えば25〜29歳の平均給与は373万円から340万円に減少(-34万円)している。30〜34歳では、実に450万円から405万円にまで減少している(-45万円)。
こうした過去の「自公連立政権の実績」に目をつぶったまま、また「日本経済は全治3年」などと言われても、いったいどこまで信用されるのだろうか?